
第一章:GoziとKota
2024年3月初旬、春の気配が群馬の空にも微かに漂い始めたころ。
Goziは高崎の静かなマンションの一室で、窓から広がる山脈をぼんやりと見つめていた。
2年前、東京からこの地へと移住してきた。
自然に囲まれた暮らし。穏やかな人々。
だが、何かが足りなかった。
「群馬に移住したけど、地域との繋がりは全くできない」
Goziはまさに移住者がっかりシンドロームに陥っていた。
そんなある日、Xのタイムラインにふと現れた一人の投稿が目に留まる。
投稿主はKota。【メタバース×農業】という興味深い活動をしていた。
「この人に会ってみたい!」
Goziの目がバキバキになり、体温が一気に上昇する。
「DM!!!」
必殺技を叫ぶような勢いでGoziはKotaのXにDMを送っていた。
本能的かつ瞬発的なそのDMはKotaの琴線に触れたのであろうか、
数日後の3月10日、二人は高崎のスターバックスで顔を合わせた。

「初めまして、Goziです」
「Kotaです。群馬でweb3の話、できる人がいるとは思わなかったです」
2人は笑い合い、会話はすぐに熱を帯び、あっという間に打ち解けた。
お互いに、地域で面白いことをしたい、という想い。
そして、web3という新しい技術への共通の関心。
「web3と地域活性、この組み合わせで何かできたらいいですね」
Kotaの一言が、すべての始まりだった。
そこから1ヶ月半、お互いの日常の中でアイデアを温めながら、次のミーティングの日を迎えた。
4月26日、夜21時半。
オンラインでの打ち合わせ。
そこで「群馬ラボ」という構想が出てきた。
「地域に貢献するタスクをこなすことで、地域から報酬がもらえる仕組みを作りたい」
Goziの提案にKotaが応える「DAOの仕組み、いいですね地域に根ざしたDAO」
山古志のDAO、農業系のDAO――既存の取り組みを参考にしつつ、自分たちにできることを夢中で話し合った。
そして、5月7日。
DAO構築の専門企業『Unyte』へ相談を持ちかけた。
話は具体性を帯び、未来が現実のものとして輪郭を持ち始める。
しかし、1つの課題が浮上する。
「ぐんらぼ」という、すでに存在する団体があったのだ。
「群馬ラボという名前、ちょっと似すぎてるかも…」とGoziの悩みに対して
「じゃあ、『群馬先進研究所』とか?理念にも合うし」Kotaが提案する。
けれど、それもまた長すぎる。
Goziは頭がはげるぐらい脳内細胞をフル回転させる。
「英語にして Gunma Advance Laboratory…更に略してGALYEA(ガレア)!」
Goziは実力以上のネーミング力を発揮し、その代償に髪の毛を数本失った。
計らずしも、GALYEAに秘められた意味をこの時の二人はまだ知らない。
新たな名前を得て、二人の夢は確かに動き出した。
XのDMから始まった小さな出会いは、群馬のからっかぜに乗って、思いもよらないところに飛んでいく。
GALYEA――
それは、地方と未来を繋ぐ、挑戦の物語のはじまりだった。